ベトナム株式市場のリターンは、しばしば「VND 預金金利・国債利回りとの相対比較」で語られます。預金金利が高い局面では資金が定期預金に向かい株式市場が冷え込み、預金金利が低下する局面では資金が株式市場に向かう、という資金フローの構造があります。本記事ではベトナム国内の金利環境の枠組みを公式情報の範囲で整理し、株式リターンと比較する視点を提供します。特定銘柄の売買判断や金利・株価の予測は扱いません。
SBV 政策金利の枠組み
ベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam、SBV)は複数の政策金利を運用しています(出典:SBV 公式、2026 年 6 月時点)。
- 再融資金利(Refinancing Rate):商業銀行が SBV から短期資金を借り入れる際の金利
- 再割引金利(Discount Rate):商業銀行が SBV に手形を再割引する際の金利
- オーバーナイト金利
- 預金金利上限:短期 VND 預金(6 ヶ月未満)に対する上限規制
これらの政策金利は SBV のウェブサイトで公開されており、市場金利全体の基準となっています。
VND 預金金利の典型的水準
ベトナムの商業銀行が個人向けに提示する VND 定期預金金利は、概ね以下のレンジで推移してきました(出典:各行公開金利・SBV 公表、2026 年 6 月時点)。
| 預入期間 | 直近レンジ |
|---|---|
| 3 ヶ月 | 約 3〜5% |
| 6 ヶ月 | 約 4〜6% |
| 12 ヶ月 | 約 5〜7% |
| 24 ヶ月以上 | 約 6〜8% |
商業銀行ごとに金利は大きく異なり、国有大手銀行(VCB、BID、CTG、Agribank)が低め、民間銀行(VPB、SHB、HDB 等)はやや高めという傾向があります。
国債利回り
ベトナムの国債(VGB、Vietnam Government Bond)の利回りは、HNX で取引されています(出典:HNX 公式、2026 年 6 月時点)。
国債利回りは年限(1 年、5 年、10 年、15 年、30 年)別に取引され、各年限の利回りは HNX の Bond Market セクションで確認できます。10 年国債利回りは概ね 2〜4% 程度のレンジで推移しています(出典:HNX 国債取引データ、2026 年 6 月時点)。
国債利回りは無リスク金利として、株式の期待リターンを評価する際の基準(リスクプレミアムの議論)になります。
VN-Index の長期リターン
VN-Index は 2000 年 7 月の市場開設以来、長期的には上昇基調にあります。直近 10 年の年平均リターン(配当除く)は概ね 5〜10% 程度で推移しており、配当込みではこれに 1〜2% が加算されます(出典:HOSE 公式・Vietstock Finance、2026 年 6 月時点)。
ただし以下の特徴があります:
- 大きなドローダウン:2022 年は VN-Index が約 40% 下落(出典:HOSE 公式)。リスク資産としてのボラティリティは高い
- 短期的な乖離:金利低下局面(2024〜2026 年)では預金金利を大きく上回るリターンとなる年もあれば、金利上昇局面で逆転する年もある
- セクター格差:銀行・IT・小売の代表銘柄が全体を牽引する局面が多い
株式と預金の比較における考え方
預金金利と株式リターンを比較する際の一般的な視点を、客観事実として以下にまとめます(出典:金融経済の標準的な議論、2026 年 6 月時点)。
- リスク水準が異なる:預金は元本保証(一定範囲)、株式は元本変動
- 流動性:預金は満期前解約で利息が大幅減、株式は基本的に翌営業日決済で換金可能
- 税制:預金利息に 5%、配当に 5%、譲渡益に 0.1% の源泉徴収(配当・キャピタルゲインの源泉徴収税 を参照)
- インフレ調整後:ベトナムは CPI が 3〜4% 程度で推移する時期が多く、預金金利からインフレを差し引いた実質金利は限定的
注意点
- 金利水準は時期で大きく変動:本記事の数値は 2026 年 6 月時点の典型的レンジ。最新水準は SBV・HNX 公式情報をご確認ください
- 個別銘柄のリターン:本記事は市場平均(VN-Index)の話。個別銘柄のリターンは大きく分散します
- 「金利が下がれば株が上がる」は単純化:実際は外国人投資家動向、為替、企業業績など多変数で決まる