ROE(Return on Equity、自己資本利益率)と ROA(Return on Assets、総資産利益率)は、企業がどれだけ効率的に利益を生んでいるかを示す代表的な収益性指標です。特に銀行株の評価ではバリュエーション指標(PER・PBR)より優先される場面も多く、ベトナムでも銀行の決算発表で必ず開示される項目です。本記事では算出方法、ベトナム企業の典型的な水準、PER との違いを公式情報の枠組みで整理します。特定銘柄の売買判断は扱いません。
定義と算出
ROE と ROA は次式で算出します:
ROE = 純利益 / 自己資本(株主資本)
ROA = 純利益 / 総資産
両者の関係は デュポン分解 で次のように表せます:
ROE = ROA × (総資産 / 自己資本) = ROA × レバレッジ
つまり ROE は ROA とレバレッジ(負債依存度)の組み合わせで決まり、同じ ROA でもレバレッジが高い企業ほど ROE が高くなります(出典:一般的な財務分析の定式、2026 年 6 月時点)。
ベトナム銀行株の典型的水準
ベトナムの大手銀行は ROE が 15〜25% 程度と高水準を維持しています(出典:各行 IR 開示、2026 年 6 月時点)。
| 銀行 | 2025年ROE | 2025年ROA |
|---|---|---|
| VCB(Vietcombank) | 約 19.02% | 約 1.01% |
| BID(BIDV) | 約 19.02% | 約 1.01% |
| TCB(Techcombank) | — | — |
| HDB(HDBank) | 25.3% | 2.1% |
| LPB(LPBank) | 25.2% | 2.05% |
| NAB(Nam A Bank) | 約 20% | 1.3% |
銀行は規制資本要件(CAR)で自己資本比率の下限が定められているため、レバレッジを高めて ROE を引き上げる余地は限定的です。それでも高 ROE を維持できるのは、純金利マージン(NIM)が高いことと、非金利収益(手数料・外国為替)が拡大していることが背景です。
製造業・不動産の典型的水準
製造業・不動産は銀行よりレバレッジが低いため、ROE と ROA の差が銀行ほど大きくありません(出典:Vietstock Finance 銘柄ページ、2026 年 6 月時点)。
| 銘柄例 | 2025年通期 ROE | 補足 |
|---|---|---|
| HPG(Hoa Phat) | 約 15-18% | 鉄鋼大手、好況期 |
| FPT | 約 25% | IT、軽資産モデル |
| VHM(Vinhomes) | プロジェクト譲渡で変動 | 不動産 |
| VNM(Vinamilk) | 20% 超 | 安定収益型 |
軽資産モデル(IT・コンサルティング)は ROA・ROE 両方が高くなる傾向、不動産は会計上のプロジェクト譲渡タイミングで両方が大きく振れる特徴があります。
PER との違いと使い分け
PER と ROE は補完関係にあります(出典:一般的な財務分析の定式、2026 年 6 月時点)。
- PER:市場が当該企業の利益にいくら払っているか(時価評価)
- ROE:企業自身が自己資本を使ってどれだけ利益を生んだか(企業実力)
両者の関係を示す指標として PER = PBR / ROE が成り立ちます。高 ROE 企業はそれだけで PBR が高くなる傾向があり、結果として PER も高めに出ます。
ROE / ROA を読む際の注意点
- 一時的要因の混入:子会社株式譲渡益・引当戻入などで純利益が膨らむと ROE が一時的に高く出る
- レバレッジリスクの過小評価:ROE は高くても、ROA が低くレバレッジで稼いでいる企業は景気後退時に脆弱
- 業種横断比較は意味を持ちにくい:銀行と製造業を ROE の絶対値だけで比較しても意味がない
- 時系列推移:単年度ではなく 3〜5 年の推移で安定性を確認するのが基本
各社の ROE・ROA・NIM 等の詳細は Vietstock Finance や CafeF の銘柄ページ、当該企業の公式 IR ページでご確認ください。