PER(Price Earnings Ratio、株価収益率)は、株価が 1 株当たり利益(EPS)の何倍にあたるかを示すバリュエーション指標です。ベトナム株式市場ではセクター間でレンジが大きく異なるため、絶対値だけではなく業種や歴史的な相場局面と比較することが重要です。本記事では PER の算出方法、ベトナム株式市場での歴史的水準、注意点を公式情報・市場データの枠組みで整理します。特定銘柄の売買判断は扱いません。
PER の定義と算出
PER は次式で算出します:
PER = 株価 / 1 株当たり利益(EPS)
EPS は 過去 12 ヶ月分(trailing EPS) を用いる場合と、会社・アナリスト予想(forward EPS) を用いる場合があり、Vietstock Finance や CafeF など各種金融データサイトでは前者を表示するのが一般的です(出典:Vietstock Finance 銘柄ページ、2026 年 6 月時点)。
PER は「投資家が現在のその会社の利益水準に対して、何倍の対価を払って株を買っているか」を示し、業績期待や金利環境を反映します。
VN-Index の歴史的 PER 水準
ベトナム株式市場全体(VN-Index ベース)の PER は、過去 10 年で概ね 10〜20 倍のレンジで推移してきました。2022 年の弱気相場では約 10〜11 倍まで低下し、2024〜2026 年の回復局面では 14〜16 倍前後で取引される時期が多くなっています(出典:HOSE 公式・Vietstock Finance、2026 年 6 月時点)。
正確な現在値・過去推移は HOSE 公式の「Market Statistics」ページや Vietstock Finance、CafeF の指数チャートで確認できます。
セクター別の PER 傾向
ベトナム株のセクター別 PER は、以下のような傾向で乖離が大きくなっています(出典:Vietstock Finance セクター集計、2026 年 6 月時点)。
- 銀行:6〜10 倍程度(高ROEだがリスク資産が大きく低 PER)
- 不動産:会計の歪み(プロジェクト譲渡損益)で大きく振れる
- 小売・消費:15〜25 倍程度
- IT:20〜30 倍程度(成長期待)
- エネルギー・鉄鋼:景気循環で 5〜30 倍と幅広い
このため、ある銘柄の PER を単独で見るのではなく、同業他社や同セクター中央値と比較するのが基本です。
PER だけで判断する際の注意点
PER は便利な指標ですが、以下の点で誤読を招きやすい指標でもあります。
- 特殊要因の影響:会計上の引当戻入、子会社株式譲渡益、土地補償金など 1 回限りの利益で EPS が膨らむと、PER は見かけ上低くなる(例:本記事と同じサイトに掲載されている Hodeco (HDC) の 2025 年実績は子会社売却益で利益が前年比 8 倍以上に膨らんだ)
- 損失企業では計算不能:EPS がマイナスの企業は PER が算出できず、別指標(PBR、EV/EBITDA など)で評価する必要がある
- 業種特性:銀行や不動産は B/S 集約型で PER が低めに出る一方、IT や小売は P/L 中心で高めに出るため、業種横断比較は意味を持ちにくい
- 成長率との比較:成長率の高い企業は PER が高いのが普通であり、PER の絶対値だけで「割高/割安」を判断するのは不適切
他のバリュエーション指標との併用
実務では PER 単独ではなく、以下の指標と組み合わせて評価するのが一般的です(出典:Vietstock Finance 各種解説、2026 年 6 月時点)。
- PBR(Price-to-Book Ratio):株価 / 1 株当たり純資産
- P/S(Price-to-Sales Ratio):株価 / 1 株当たり売上
- EV/EBITDA:企業価値 / EBITDA
- ROE(Return on Equity):純利益 / 自己資本(→ROE/ROA とはを参照)
各指標の数値・推移は Vietstock Finance または CafeF の銘柄詳細ページで確認できます。