ベトナム株を実際に売買するとき、日本株とは違うルールに最初は戸惑う方が多いです。取引時間の区切り方、注文の種類、ロット(取引単位)、決済までの日数、そして外国人特有の保有比率制限など、押さえておきたい論点が複数あります。本記事では、ベトナム株の売買実務の基本枠組みを、公式情報の建て付けで一通り整理します。具体的な時刻や数値の最新値は変更される可能性があるため、必ず各公式情報をあわせてご確認ください。
結論:売買の基本フロー
ベトナム株の売買は、ざっくり次のような流れで進みます。
- 取引したい銘柄の上場市場を確認する(HOSE・HNX・UPCoMのいずれか)
- 証券会社の取引アプリ・Webプラットフォームから、銘柄コード・数量・価格・注文タイプ(指値LOや成行系など)を入力して発注
- 取引所のセッション(寄付・連続取引・引け)でマッチングが行われ、約定すれば成立
- 取引後、一定の決済サイクル(一般にT+2など)を経て、株式と資金の受け渡しが行われる
- 配当・売却代金は登録済みの銀行口座(BIDV等の現地銀行)で受け取る
日本株の売買に慣れている方であれば、流れ自体はおおむね類推できます。ただし注文タイプの細かい区分や、外国人保有比率制限(FOL)の存在など、ベトナム特有の論点があるため、初めて発注する前に取引画面の表記と公式ルールを一度突き合わせておくと安心です。
取引時間(HOSE・HNX・UPCoM)
ベトナムには3つの主な株式市場区分があり、それぞれの取引時間と運営ルールはホーチミン証券取引所(HOSE)、ハノイ証券取引所(HNX)、UPCoMの運営側が公式に定めています(出典:HOSE 公式、HNX 公式、いずれも2026年6月時点)。
ここでは時間帯の「枠組み」を整理します。具体的な時刻(何時何分から何時何分まで)は規則改正で見直される可能性があるため、最新の正確な時刻は必ず各取引所の公式案内、または利用中の証券会社の取引画面でご確認ください。
セッションの基本構成
ベトナムの株式市場は、一般に次のようなセッション構成が公式に整理されています。
- 寄付板寄せ(オープニング・コール・オークション、ATO):取引開始時に、買い・売り注文をまとめてマッチングし、始値を1本決める時間帯
- 連続取引(コンティニュアス・マッチング):注文が随時マッチングされる、いわゆる「ザラ場」にあたる時間帯
- 昼休み:午前のセッションと午後のセッションの間に休止時間が入る運用
- 引け板寄せ(クロージング・コール・オークション、ATC):取引終了時に、買い・売り注文をまとめてマッチングし、終値を1本決める時間帯(HOSE)
- PLOフェーズ:引け後の終値での追加取引フェーズ(一部市場区分で運用)
HOSEはATO・連続・ATC(および引け後のPLO)という構成、HNXは連続セッション中心の構成、UPCoMは連続セッション中心の構成と、市場ごとに細部が異なります。具体的なセッション構成と時刻は、各取引所の公式ルール(HOSE Trading Rules、HNX Trading Rules)または利用中の証券会社の取引時間案内をご確認ください。
営業日と祝日
ベトナム株式市場の営業日は、原則として月曜から金曜の平日です。ベトナムの祝日(旧正月テト、解放記念日、独立記念日など)には市場が休場します。年間の休場カレンダーは、HOSE・HNXの公式アナウンスで毎年案内されているため、長期休暇前後の発注予定がある場合は事前に確認しておくとスムーズです。
注文タイプ(LO・ATO・ATC・成行系)
ベトナム株の注文タイプは、市場区分ごとに使えるものが分かれています。証券会社のアプリ・Webプラットフォームの注文画面でプルダウン表示される注文タイプは、概ね次のカテゴリに分類できます。
指値注文(LO:Limit Order)
価格を指定して発注する、最も基本的な注文タイプです。指定した価格以下(買い)または以上(売り)でしか約定しないため、想定外の高値づかみ・安値売りを避けたい場合に向きます。HOSE・HNX・UPCoMいずれの市場でも、連続取引時間帯の主力注文タイプとして使われています。
ATO(At-the-Open)注文
寄付の板寄せ時間帯にだけ受け付けられる、始値での約定を狙う注文タイプです。指値を付けずに「始値で買いたい・売りたい」という意思を表現します。寄付板寄せが終了した時点でマッチングされなかったATO注文は、原則として失効します。HOSEで運用されています。
ATC(At-the-Close)注文
引けの板寄せ時間帯にだけ受け付けられる、終値での約定を狙う注文タイプです。終値ベースでまとめて約定させたい場合に使われます。引け板寄せが終了した時点でマッチングされなかったATC注文は、原則として失効します。HOSEで運用されています。
成行系注文(MP・MOK・MAK・MTLなど)
ベトナム株の連続取引時間帯では、価格を指定しない成行系の注文タイプが複数用意されています。市場ごとに名称と挙動が異なるため、ここでは概念のみ整理します。
- MP(Market Price)系:HOSEの連続取引時間帯で使われる成行系注文の総称。反対側の板の最良気配から順にマッチングしていく挙動が公式に定義されています
- MTL(Match To Limit)系:板にある気配で約定可能な分だけ約定し、残りは指値注文として板に残るタイプ
- MAK(Match And Kill)系:板にある気配で約定可能な分だけ約定し、残りは失効するタイプ
- MOK(Match Or Kill)系:注文数量の全量が約定可能でなければ、全量失効するタイプ
各成行系注文の正確な挙動(マッチング順序、残数の扱い、市場区分ごとの取扱い)は、HOSE・HNXの公式トレーディングルール、または利用中の証券会社のヘルプページをご確認ください。
取引単位(ロット・呼値)
ベトナム株の取引単位(ロット)と価格刻み(呼値・ティックサイズ)は、市場区分・価格帯ごとに公式ルールで定められています。
ロット(取引単位)
ベトナム株は、原則として一定単元の倍数で発注する「単元株制度」が採られています。市場区分ごとに通常取引のロットと、それを下回る端株(odd lot)の取扱いが規定されています。端株は通常の板取引とは別の経路で取り扱われる場合があるため、半端な株数を売買する場合は、利用中の証券会社の取扱方針を確認してください。
具体的なロット数(例:通常取引は何株単位、端株はどの範囲か)は、HOSE・HNXの公式ルールおよび証券会社の取引画面に表示される単位が一次情報です。本記事の公式情報の範囲では、現時点で各市場区分の正確なロット数を確定的に記述することは控えます。最新のロット規定は、HOSE・HNXの公式トレーディングルール、または利用中の証券会社の銘柄詳細画面をご確認ください。
呼値(ティックサイズ)
ベトナム株の呼値(注文価格の最小刻み)は、価格帯ごとに段階的に設定される運用が一般的です。低位株は小さな刻み、中・高位株はやや大きな刻み、というように、価格水準に応じてティックサイズが切り替わる仕組みです。
具体的な刻み幅(例:価格VND X以下は VND Y、VND X〜Z は VND W、…)は規則改正の対象になり得る数値です。最新値は、HOSE・HNXの公式ルールページ、または利用中の証券会社の発注画面で表示される刻み幅をご確認ください。
値幅制限
HOSE・HNX・UPCoMでは、1営業日の値幅制限(前日終値またはレファレンス価格に対する上下限)が設定されています。値幅制限の幅は市場区分ごとに異なるのが一般的で、IPO直後や上場一時停止後の再開時には別途特例的な値幅が適用されるケースがあります。
注文画面で「価格が上下限を超えています」というエラーが出る場合は、値幅制限に抵触している可能性が高いため、現値・前日終値と上下限を確認してください。
決済サイクル(T+の考え方)
ベトナム株の決済は、約定日(T日)から一定営業日後に株式と資金の受け渡しが行われる仕組みです。決済機関はベトナム証券保管・決済機関(VSDC)が担っています(出典:VSDC 公式、2026年6月時点)。
公開情報として、ベトナム株式の決済サイクルは数営業日後に株式・資金の受け渡しが完了する形が公式に定められています。具体的な営業日数(T+いくつか)は、規制改正・市場インフラのアップデートにより見直されることがあるため、現時点の正確な決済サイクルは、VSDC公式または利用中の証券会社の決済日案内をご確認ください。
実務上、約定したからといってその日のうちに売却代金が出金可能になるわけではない、という点を押さえておくと、入出金スケジュールの組み立てがしやすくなります。
外国人保有比率制限(Foreign Ownership Limit)
ベトナム株には、銘柄ごとに外国人投資家全体で保有できる比率の上限(Foreign Ownership Limit、FOL/Room)が定められている運用があります。
業種・規制分野により異なりますが、原則として一般銘柄では一定の上限(例として広く知られているのは49%という枠ですが、これは目安であり、銘柄により異なる)が設定されています。銀行業など一部の規制業種では、より低い上限が設定されているケースもあります。
外国人保有比率が上限に達している銘柄(いわゆる「Room満杯」銘柄)は、外国人投資家が市場で買い向かうことができず、外国人同士の相対取引(プット・スルー取引等)で取得するか、外国人保有比率に空きが出るまで待つ運用になります。
外国人保有比率の最新値(銘柄ごとの上限・現在の保有比率)は、HOSE・HNXの公式銘柄情報ページ、VSDCの公開情報、または利用中の証券会社の銘柄詳細画面に掲載されています。外国人投資家にとって取得可能性そのものに関わる重要情報のため、発注前に一度確認しておくと安心です。
取引アプリ・プラットフォームの種類
ベトナム株の取引を行うためのプラットフォームは、現地ベトナムの証券会社経由と、日本の証券会社経由で大きく分かれます。
現地ベトナムの証券会社経由
現地証券会社(SSI、Sacombank Securities、VPS、VNDirectなど)に口座を開設すれば、各社のWebトレーディングシステム(例:SSIのiBoard)やスマートフォンアプリから直接発注できます(出典:SSI Securities — Individual Customer、2026年6月時点)。注文タイプ・取引時間・FOLなどは取引画面で確認できる一方、画面表示が英語またはベトナム語中心になるため、専門用語の事前理解があると操作がスムーズです。
現地証券会社は、一般に売買手数料が現地水準(取引金額の0.数%台)で抑えられている傾向がありますが、最新の手数料は必ず各社の公式手数料表でご確認ください。
日本の証券会社経由
日本在住の方の場合は、SBI証券・アイザワ証券など日本の証券会社が取り扱うベトナム株のサービスを利用するルートが一般的です(出典:SBI証券 公式、2026年6月時点)。発注はそれぞれの証券会社の取引画面(電話注文を含む場合もあり)から行い、約定は現地市場で行われる仕組みです。
日本の証券会社経由の場合、取扱銘柄が限定的だったり、手数料・為替手数料が現地経由より高めに設定されたりする傾向があります。一方で、日本語でのサポートが受けられ、口座開設のハードルも現地より低いというメリットがあります。具体的な取扱銘柄・手数料は、各社の公式ベトナム株案内ページでご確認ください。
注意点
ベトナム株を発注する前に、押さえておきたい実務的な留意事項を整理します。
- 取引時間と祝日の事前確認:ベトナムの祝日カレンダーは日本と異なります。長期休暇前後は、入出金スケジュールも含めて影響範囲を確認しておくと安心です
- 注文タイプの誤選択:成行系(MP、MAK、MOKなど)は、価格を指定しない分、思わぬ価格で約定する可能性があります。初めて使う注文タイプは、デモ口座や少額で挙動を確認してから本番で使うのが無難です
- 値幅制限への抵触:強い材料が出た銘柄は、寄付直後に値幅制限の上下限に張り付くケースがあります。指値の置き方とキャンセル・訂正の挙動を、利用中の証券会社のヘルプで確認しておきましょう
- FOL(外国人枠)の確認:外国人投資家にとっては、買おうとした銘柄が「Room満杯」で取得不可、というケースがあります。発注前にFOLの空きを確認する習慣をつけると、取得機会を逃しにくくなります
- 為替リスク:ベトナムドンと日本円・米ドルの為替変動は、円ベースの損益に直接影響します。為替の取扱い(送金経路・換算レート)は、利用中の銀行・証券会社の規定を事前に確認してください
- 税務の取り扱い:ベトナム側・日本側の税務(源泉徴収、確定申告の要否)は居住状況により異なります。個別の取り扱いは税理士・所轄税務署にご相談ください
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ご注意
投資判断について
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄・金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の内容に基づき被ったいかなる損失についても、運営者は責任を負いかねます。
最新の制度・手数料・取引時間等は、必ず各社の公式サイトおよび関係当局の公式発表をご確認ください。
出典
本文中で参照した一次情報の取得時点はいずれも2026年6月12日です。
- Ho Chi Minh Stock Exchange(HOSE)公式 — 取引時間・上場銘柄・取引ルール
- Hanoi Stock Exchange(HNX)公式(英語) — HNX・UPCoMの市場運営ルール
- Vietnam Securities Depository and Clearing Corporation(VSDC)公式 — 決済・保管、外国人投資家コード
- State Securities Commission of Vietnam(SSC)公式 — ベトナム証券規制の所管機関
- SSI Securities — Individual Customer(英語) — 現地証券会社の個人向けサービス
- SBI証券 公式 — 日本在住者向けのベトナム株取扱例