3メガバンクがそろって「戦略的株主」に
日本の3メガバンクグループは、いずれもベトナムの大手商業銀行の大株主です。みずほはベトコムバンク(Vietcombank、ティッカー VCB)、三菱UFJ(MUFG)はヴィエティンバンク(VietinBank、CTG)、三井住友(SMBC)はVPバンク(VPBank、VPB)に、それぞれ発行済株式の15〜20%弱を保有しています。3行ともホーチミン証券取引所(HOSE)の上場銘柄です。ティッカーは銘柄を見分けるためにだけ記載しています。
本稿では、各行の公式発表・IR開示とベトナムの経済メディアの報道をもとに、出資の時期・比率・金額・公表された目的と、2026年10月時点で確認できる持株比率を整理します。あわせて、外国人保有の上限ルールと、日系企業にとっての意味を解説します。特定銘柄の売買の判断や、株価の見通しは扱いません。
出資の枠組み ― 外国人保有の上限ルールと「戦略的投資家」
1社20%、外国人合計30%が原則
ベトナムの銀行(信用機関)に外国人が出資する場合の上限は、2014年の政府議定(Decree 01/2014/ND-CP)で定められています。Vietstock(2014年1月9日)によると、この議定で外国の戦略的投資家1社が保有できる比率は、それまでの15%から20%に引き上げられました。2024年に改正された信用機関法のもとでも、外国人の保有比率はこの議定に従って維持されています(Vietstock、2024年7月5日)。議定は2025年に改正議定(Decree 69/2025/ND-CP)で見直され、2025年5月19日に施行されました。
| 区分 | 上限(資本金に対する比率) |
|---|---|
| 外国の戦略的投資家1社 | 20% |
| 外国人投資家の合計 | 30%(例外は後述) |
※2026年10月時点。Decree 01/2014/ND-CP(Vietstock 2014年1月9日・2024年7月5日の報道)と、Decree 69/2025/ND-CP(Vietstock 2025年3月20日の報道)に基づいて作成しています。
「戦略的投資家」は、外国の投資家の中でも1社で最大20%までの保有が認められる区分です。日本の3メガバンクは、いずれもこの立場で出資しています。
例外は「49%」
改正議定には例外もあります。経営の弱い金融機関を国家銀行(SBV)の再建策に沿って引き受けた銀行(強制移管を受けた銀行)は、移管計画の実施期間中に限り、外国人合計の上限を30%超・最大49%まで引き上げられます。ただし、国が資本金の50%超を持つ銀行は対象外です。VnEconomy(2025年5月23日)によると、対象となった民間銀行は HDBank、MBBank、VPBank の3行です。
国が過半を持つベトコムバンクとヴィエティンバンクには、原則の30%がそのまま適用されます。ヴィエティンバンクのIRページも、同行の外国人保有の上限を30%と明記しています。
データで見る3メガバンクの出資
一覧表
| 日本側 | ベトナム側 | ティッカー | 出資の時期 | 取得時の比率 | 取得額(公表・報道ベース) | 公表された主な目的 | 直近で確認できる比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| みずほ(出資時はみずほコーポレート銀行) | ベトコムバンク | VCB | 2011年9月に契約 | 15% | 約5億6,730万米ドル | (2024年の協力方針)卸売・リテール金融の拡大、リスク管理・ガバナンス、デジタル化など | 15%(VCB公式IR) |
| MUFG(出資時は三菱東京UFJ銀行) | ヴィエティンバンク | CTG | 2012年12月に合意、2013年5月に完了 | 19.73% | 約7億4,300万米ドル(15兆4,650億ドン) | 資本の増強、技術協力、リテールの拡大、在ベトナム日系企業へのサービス | 19.73%(2025年6月の開示) |
| SMBC(三井住友銀行) | VPバンク | VPB | 2023年3月に合意、同年10月に完了 | 15% | 35兆9,000億ドン超(約15億米ドル) | 財務基盤の強化、FDI(外国直接投資)企業を含む顧客層への対応、インフラ・グリーン分野への資金供給 | 15.005%(2024年12月末) |
| SMBC(過去の事例) | エクシムバンク | EIB | 2007年に戦略提携の契約 | 15% | ― | ― | 2022年に提携を終了。2023年6月末で2.26% |
※各行の公式発表・IR開示(Vietcombank、VietinBank、VPBank)と、VnEconomy・CafeF の報道をもとに作成(2026年10月6日取得)。比率は各行の開示時点のもので、増資などで変わることがあります。
みずほとベトコムバンク(VCB)
VnEconomy の報道によると、ベトコムバンクは2011年9月30日、発行済株式の15%にあたる3億4,760万株を、1株3万4,000ドン(総額約5億6,730万米ドル)でみずほに売却する契約を結びました。みずほはベトコムバンクにとって唯一の外国の戦略的パートナーになりました。
ベトコムバンクの公式IR資料(株主構成)では、株主構成は次のとおりです(資料の作成時点は明記されていません)。
- 国家銀行(国の持分の代表):74.8%
- みずほ:15%
- その他の株主:10.2%
2024年12月の同行の発表では、両行は卸売・リテール金融の拡大、リスク管理・ガバナンス、デジタル化などで協力を広げる方針を確認しています。
なお、ベトコムバンクは最大6.5%(最大5億4,310万株)の第三者割当増資を計画しており、2026年中の完了を目指しています。CafeF(2026年5月4日)によると、同行の経営陣は2026年の定時株主総会で「みずほは少なくとも現在の持株比率を保つ形で参加する」と説明しました。増資が実施されれば株主構成は変わりうるため、最新の比率は同行のIRで確認する必要があります。
MUFGとヴィエティンバンク(CTG)
CafeF の報道によると、ヴィエティンバンクは2012年12月27日、当時の三菱東京UFJ銀行(BTMU)と戦略的提携で合意しました。2013年5月10日には、BTMUが6億4,438万9,811株の代金として7億4,300万米ドル(15兆4,650億ドン)を現金で払い込み、国の持分64.46%に次ぐ19.73%の株主となって、取締役会に2議席を得ました。合意した当時、ヴィエティンバンクは資本の増強、技術協力、リテールの拡大を、BTMUはベトナムで事業を行う日系企業(当時約1,500社)へのサービスとアジア事業の拡大を、それぞれの目的に挙げていました。
ヴィエティンバンクが2025年6月に公表した「資本金の1%以上を保有する株主」の開示でも、国64.46%、MUFG Bank, Ltd 19.73%と比率は変わっていません。戦略的投資家の上限である20%に近い水準を、10年以上保っています。2024年9月の同行の発表では、MUFGを「11年間ともに歩んできた戦略的パートナー(約20%を保有)」と紹介しています。同じ発表によると、同行の FDI 顧客は7,000社超(国内の FDI 顧客の約30%)で、国・地域ごとの担当チームを置いて対応しています。
SMBCとVPバンク(VPB)
VPバンクの発表によると、両者の関係は消費者金融から始まりました。
- 2021年末:SMBCグループの消費者金融会社(SMBCコンシューマーファイナンス)が、VPバンク傘下の FE Credit の株式49%を取得
- 2022年5月:銀行同士で業務提携契約を締結
- 2023年3月:VPバンクの資本金の15%を第三者割当でSMBCに発行することで合意
この第三者割当は2023年10月に完了しました。主な条件と結果は次のとおりです。
- 発行株数:11億9,000万株超
- 総額:35兆9,000億ドン超(約15億米ドル)
- 売却制限(ロックアップ):5年
- VPバンクの自己資本:103兆5,000億ドンから約140兆ドンに増加
VPバンクの2024年の年次報告書では、2024年12月末時点でSMBCが11億9,050万株(15.005%)を保有し、同行で唯一の5%以上の大株主となっています。なお CafeF(2026年9月25日、ロイター報道の引用)によると、SMBCは保有比率を約20%に引き上げる方向でVPバンクと協議していると報じられています。両行はコメントしておらず、実施は確定していません。
合意時の発表では、財務基盤の強化、FDI 企業を含む顧客層への対応、SMBCの顧客である20万社超の多国籍企業・大企業のベトナム投資の呼び込み、インフラ・グリーン分野への資金供給が目的に挙げられていました。
同じ年次報告書は、開設2年目のFDIセンターがSMBCの支援を受け、2024年末に日本・韓国などの多国籍企業500社と取引していると説明しています。
過去の事例:SMBCとエクシムバンク(EIB)
出資がすべて現在まで続いているわけではありません。SMBCは2007年にエクシムバンクと戦略提携の契約を結び、15%を保有していました。
CafeF の報道によると、その後の経過は次のとおりです。
- 2022年3月:SMBCが「事業環境の大きな変化」を理由に、提携の終了を公表
- 2022年10月:国家銀行が、SMBCの持つ株式の売却を承認
- 2023年1月13日:SMBCが1億3,280万株を売却し、比率は4.27%に低下(大株主から外れる)
- 2023年6月末:比率は2.26%
論点と注意点
なぜ「出資」という形なのか
日本の銀行が現地の大手銀行に出資した理由は、合意した当時の発表から読み取れます。BTMUはヴィエティンバンクの全国網を通じて日系企業にサービスを提供することを、SMBCは自行の顧客である多国籍企業をベトナムに呼び込むことを掲げていました。各行の公表内容からは、「外資の銀行が自前で全国に店舗網を広げる」のではなく、「現地の大手銀行の顧客基盤と店舗網を活用する」ための仕組みとして出資を位置づけていたと考えられます。
比率の上限が持つ意味
外国人保有の上限30%のうち、ベトコムバンクでは15%、ヴィエティンバンクでは20%弱を、日本の戦略的株主1社が保有している計算です。ほかの外国人投資家が使える枠は、その分だけ少なくなります。銘柄ごとの外国人の保有比率や残りの枠は日々変わるため、HOSEの公式情報や利用中の証券会社の画面で確認してください。外国人の保有制限の仕組みは、当サイトのガイド「外国人保有制限(FOL)とは」で詳しく解説しています。VPバンクは例外の対象で、外国人合計の上限を最大49%まで引き上げることが認められていますが、戦略的投資家1社の上限は20%のままです。
日系企業にとっての意味
JETROの「2024年度 海外進出日系企業実態調査」では、ベトナムの日系企業863社が回答しました。今後1〜2年で事業を拡大する方針の企業は56.1%で、ASEANの中で最も高い比率でした。ヴィエティンバンクやVPバンクの発表が示すように、日系メガバンクが出資する現地銀行は、日系を含む外資系企業との取引を広げる方針を掲げています。
ただし、日本の銀行が出資していることは、その現地銀行で日本と同じサービスや日本語での対応が受けられることを意味しません。日系企業向けの窓口(いわゆるジャパンデスク)の有無や対応範囲、口座開設の条件は、銀行や支店によって異なります。具体的な条件は、各行に直接確認する必要があります。
まとめ
- 3メガバンクは「戦略的投資家」として、ベトコムバンクに15%(みずほ、2011年)、ヴィエティンバンクに19.73%(MUFG、2013年完了)、VPバンクに15%(SMBC、2023年完了)を出資しています。
- 戦略的投資家1社の上限は20%、外国人合計は原則30%です。2025年5月からは、強制移管を受けた民間銀行に限り(移管計画の実施期間中)49%までの例外があります。
- ヴィエティンバンクとVPバンクの事例では、ベトナム側の資本増強と、現地銀行の顧客基盤を通じた日系・多国籍企業との取引拡大が目的に挙げられていました。
- SMBCとエクシムバンクのように、提携を終えた事例もあります。最新の持株比率は各行のIRとHOSEの公式情報で確認してください。
出典
- Cơ cấu cổ đông(株主構成・公式IR)
- Vietcombank chính thức bán 15% cổ phần cho Mizuho
- Vietcombank tăng cường quan hệ hợp tác chiến lược với ngân hàng Mizuho
- Chủ tịch Vietcombank: Mizuho sẽ tham gia đợt chào bán cổ phiếu riêng lẻ, mục tiêu hoàn tất trong năm 2026
- Vì sao Tokyo Mitsubishi UFJ chọn Vietinbank?
- VietinBank nhận 743 triệu USD, hoàn tất thương vụ bán cổ phiếu riêng lẻ cho BTMU
- Thông tin cổ đông sở hữu trên 1% vốn điều lệ của VietinBank
- Cơ cấu cổ đông(株主構成・外国人保有上限)
- VietinBank - Ngân hàng nội địa dành cho doanh nghiệp quốc tế
- VPBank đạt thỏa thuận bán 15% vốn điều lệ cho Ngân hàng SMBC của Nhật Bản
- VPBank và SMBC chính thức về một nhà
- VPBank Annual Report 2024(年次報告書)
- SMBC xác nhận bán gần 133 triệu cổ phiếu Eximbank, không còn là cổ đông lớn
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